イエスにはヤコブ、ヨセフ、ユダ、シモンという人間としての兄弟と妹たちがいた。(「この人(イエス)は大工ではありませんか。マリヤの子で、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではありませんか。その妹たちも、私たちとここに住んでいるではありませんか。」(マルコ 6:3, マタイ 13:55,56))
イエスに兄弟と妹たちがいたことは聖書に書かれているが、それがどのような人物であったかは書かれていないため、ヤコブについては、「マリヤがイエスを産んだ後にヨセフとの間にもうけたイエスの弟」「イエスの従兄弟」「イエスの異母兄(ヨセフにはレビレート婚により先妻がいた等の解釈による)」等といったように、教団や教派によって意見が分かれている。聖書に記されている「兄弟」という語は、兄弟とか同胞にも使われる語であり、西方教会では従兄弟、東方教会では異母妹という説が支持されてきており、弟という見方はプロテスタントの教会が支持した説であるとのことで、聖書外の史料や考古学上の証拠がまだないため、憶測で断定することはできない部分である。
しかし、聖書外の史料や伝承などによって、わかっている部分もある。
ヤコブは、十字架刑の後に復活のイエスに出会い、熱心な信仰者となった。「その後(キリストがよみがえられ、ペテロや十二弟子たちに現れた後)、キリストはヤコブに現われ、それから使徒たち全部に現われました。」(Ⅰコリント 15:7)「この人たちは、婦人たちやイエスの母マリヤ、およびイエスの兄弟たちとともに、みな心を合わせ、祈りに専念していた。」(使徒 1:14)上述のマルコ 6:3の続きで「イエスは彼らに言われた。『預言者が尊敬されないのは、自分の郷里、親族、家族の間だけです。』」(マルコ 6:4)「兄弟たちもイエスを信じていなかったのである。」(ヨハネ 7:5)と、生きている間は信じなかった兄弟たちであったが、復活の主が実際にヤコブに現れて母マリヤと共に祈る人に変えられている。
復活の主に会ったヤコブは変えられ、後にエルサレム教会の指導的な立場となり、ヤコブの手紙を記している。そして、62年に大祭司アンナスの訴えにより殉教した(ヨセフォスのユダヤ古代誌6 筑摩書房 P291参考)という。ユダはユダの手紙の作者だと言われている。シモンは、ヤコブ殉教後の教会を引き継ぎ、トラヤヌス帝時代に殉教した人物であるとされている。
コメント