「小羊うるちゃん物語Ⅳ」part 2 開かれた道

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  【前回の登場人物】
    うるちゃん  : 主人公
    へいわくん  : 夫
    サイエンくん : 長男
    W宣教師   : W教会を開拓した宣教師
    Sさん(母娘): Tカウンセリングスクールに来ていた家の教会の伝道師
    Y先生    : K教会の主任牧師
    Kさん    : Tカウンセリングスクールに来ていた求道中の女性

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  あまりにもあっけない展開だったので、今までが今までだったこともあり、だんだんと心配になってきました。本当に、3ヶ月先のサイエンくんの洗礼は実現するのか、またどこかで、できないと言い出されるのではないかと。

 2回目にK教会に足を運んだのは、12月19日(日)のクリスマス礼拝でした。夫が出張で、クリスマス礼拝だというのに、マーサさんと2人の礼拝になることから、行ってみることにしたのでした。奇しくも、A教会で傷を受けた3年後の同じ日(12月19日)でした。ある姉妹の胸に、数週間前のTカウセリングスクールで、話題になっていた手作りのクリスマスツリー型ブローチがあるのに気付きました。うるちゃんも作ろうと思ったのですが、思ったより材料が高価だったので、やめたものでした。「素敵なブローチですね。」と話しかけてみました。その姉妹は、うれしそうに、「あなたにあげる。」と言って、名前を聞いても告げられずに去って行かれたのでした。3年前と同じ日の12月19日に受けたこの行為は、どのような言葉よりもうるちゃんを慰めてくれました。最後の祈りの招きの中、祈りの中うるちゃんの頭に置かれたY牧師の手が暖かく感じられ、「この牧者は、あなたの傷を包み、あなたの牧師不信は癒されていく。」という思いが押し寄せてきたのでした。

 うるちゃんの心配を知っているかのように、うるちゃんの心を揺さぶるような出来事が起きたのです。年が明け、週に一度はTカウセリングスクールで会っていたSさんが、うるちゃんを待っていました。「あなたに、謝ることがある。暮れに、あるつてから、重大なことがわかって・・・。・・・。K教会はやめなさい。本当に申し訳ないことをした。」と(・・・は、性的な非常に下劣な内容だったため省くことにします)。それから、Tカウセリングスクールに行く度に、「祈らないでくれという手紙は出したか?」「きっぱりと、断ち切ったか?」「テープも断ったか?」という執拗なまでの確認と説得が始まったのです。しぶるうるちゃんに、彼女たち(Sさんは、母娘で来ていた)の説得は、激しさを増し加えて行きました。イエス様からではないと思いましたが、戦う気力は、うるちゃんにはありませんでした。Tカウセリングスクールへはカウンセリングの訓練に行っているのに、行けば、暗い重い気持ちになるのでした。さまざまな拒絶にあってきたうるちゃんに、開かれているたった一つの希望の道を自ら閉ざす理由はなく、ただ、すべてをご支配しておられる神に祈るだけでした。C教会の時のように、みこころではない道なら閉ざしてくださることを信じていました。

 Tカウンセリングスクールで出会ったTさんも、自分の教会(F教会)へ来るよう勧めてくださいました。とてもありがたかったし、一度会って話したF牧師は、苦しみの中にいるうるちゃんを励ましてもくださったのだが、断ることにしました。通える場所ではなかったことや、神が祈りによって開いてくださった道がK教会であると信じていたからでした。後で送られたテープ一式の教えに違和感を感じたためでもありました(F教会は一般的な日本のキリスト教の教団でしたが、とある韓国異端の教えをしていて、現在は改革がなされています)。とにかく、洗礼の日を待ちました。待つ数ヶ月、1ヶ月に一度でしたが、K教会に行き、Y先生にふれる度に、Sさんの言ったことが全くの偽りであることもわかってきました。Sさんの言うとおりであったなら、出てくることのない品性がY先生にはあったからでした。

 初めての祈祷会に出かけた時、行きのバスにたまに見かける若い男性が乗っていました。いつも意味のない言葉を大きな声でぶつぶつ言って歩いている男性でした。うるちゃんの後ろに座ったその男性がいきなりうるちゃんの頭をたたいてきたのです(今まで、一度もそのようなことはなかったですし、見たこともありませんでした)。振り向いてみると、目をそらしてぶつぶつ言っていました。顔を見たまま(目をそらされてはいましたが)、声には出さずに祈ってみました。急にその男性は黙ってしまいました。バスを降りたら、呼びとめて、トラクトでもわたせないかな、と思っていたら、バス停に着くやいなや、一目散に走り去ってしまい、あわてたように、無理やり、電車に乗って行ってしまったのでした。

 なぜ、うるちゃんが、一歩踏み出そうとすると、いつも何かあるのか、主に文句を言いたいくらいでした。しかし、主は、いつも勝利を与えてくださっていました。Sさんは、自らの終末の地震についての預言のFAXをキリスト教会や団体あちこちに送りつけ、Tカウンセリングスクールにもいづらくなり、やめていかれました。彼女たちのおかげで、K教会につながったので、このように終わるのは、とても残念でした。

 Y先生は、何も聞かずに(詮索せずに)、ありのままのうるちゃんたちを受け入れてくださいました。そして、ボアズが覆いを広げ、ルツを買い取り、贖ったように、うるちゃんたちの群れの覆いとなってくださったのでした。

 「モアブの女ルツはナオミに言った。『どうぞ、畑に行かせてください。うるちゃんに親切にしてくださる方のあとについて落ち穂を拾い集めたいのです。』すると、ナオミは彼女に、『娘よ。行っておいで。』と言った。」 (ルツ 2:2)

 その後、落ち穂を集めようとするルツにボアズが言った言葉はこうである。このボアズの言葉は、うるちゃんに言われているような言葉のようにうるちゃんには聞こえたのでした。

 「娘さん。よく聞きなさい。ほかの畑に落ち穂を拾いに行ったり、ここから出て行ったりしてはいけません。うるちゃんのところの若い女たちのそばを離れないで、ここにいなさい。刈り取っている畑を見つけて、あとについて行きなさい。うるちゃんは若者たちに、あなたのじゃまをしてはならないと、きつく命じておきました。のどが渇いたら、水がめのところへ行って、若者たちの汲んだのを飲みなさい。」(ルツ 2:8、9)

 「あなたの夫がなくなってから、あなたがしゅうとめにしたこと、それにあなたの父母や生まれた国を離れて、これまで知らなかった民のところに来たことについて、うるちゃんはすっかり話を聞いています。主があなたのしたことに報いてくださるように。また、あなたがその翼の下に避け所を求めて来たイスラエルの神、主から、豊かな報いがあるように。」(ルツ 2:11、12)

 「あの女には束の間でも穂を拾い集めさせなさい。あの女に恥ずかしい思いをさせてはならない。それだけでなく、あの女のために、束からわざと穂を抜き落としておいて、拾い集めさせなさい。あの女をしかってはいけない。」(ルツ 2:15、16)

  「ナオミは嫁のルツに言った。『娘よ。あの方のところの若い女たちといっしょに出かけるのは、けっこうなことです。ほかの畑でいじめられなくても済みます。』 それで、彼女はボアズのところの若い女たちのそばを離れないで、大麦の刈り入れと小麦の刈り入れの終わるまで、落ち穂を拾い集めた。」(ルツ 2:22、23)

 その時、うるちゃんの心に、そっとささやく声がしたように思えたのです。 「娘よ。行っておいで。」と。

 K教会への在籍を祈り、考える過程で、ルツ記の他に、「王を立てようとするのか。」という自分への問いかけもありましたが、マルチン・ルターの宗教改革以来、分裂分派を繰り返していることがつまずきの原因にもなっているケースに出会い、自分自身が新たな分派となったり、独自の思想にかたよったりすることがないように、どこかのきちんとした教団の中で、活動をしたいと思いました。支配する王ではなく、同じ志を持つ同胞の王ならばよいのだという賭けのような選択でしたが、他に道が開かれていないことと、主の導きを信じて、進むことにしたのです。

 「・・・あなたが、『回りのすべての国々と同じく、私も自分の上に王を立てたい。』と言うなら、あなたの神、主の選ぶ者を、必ず、あなたの上に王として立てなければならない。あなたの同胞の中から、あなたの上に王を立てなければならない。同胞でない外国の人を、あなたの上に立てることはできない。」(申命記 17:14-15)

 K教会のY牧師との交わりの中で、C教会のC牧師が栃木の巡回伝道に行った先で一致したと言っていたMT牧師(「小羊うるちゃん物語Ⅲ」part 1-4 教会って何? 参照)とY牧師は知り合いであり、Y牧師がMT牧師側の問題を処理した経緯を偶然聞き、神の正しさとうるちゃんへの配慮をまたまた知ることができたのでした。

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  【うるちゃんと教会】
  ★ 誘われたが違和感を感じたF教会(Ⅳpart 2)
  ☆ うるちゃんが電話をかけた「昔からの流れのキリスト教会」(part 1-3)
  ☆ はづきさん所属のA教会(part 1-3)
  ☆ 歩いて1、2分のところにあった近所のH教会(part 2-1)
  ☆ へいわくんの実家近くのA教団のW教会(part 5-4)
  ☆ 行き場をなくしたうるちゃんが飛び込んだB教会(part 5-5)
  ☆ 世界一大きいと聞いていた韓国のY教会(part 5-番外編)
  ☆ 早天祈祷のため行ったJ教会(Ⅱpart 1-5)
  ☆ カウンセラーの聖会に行った日本基督教団H教会(Ⅱpart 1-6)
  ☆ 韓国人牧師が開拓していたC教会(Ⅱpart 1-6)
  ☆ Y教会関係のTカウンセリングスクール(Ⅲpart 1-1)
  ☆ 紹介でつながったA教団のK教会(Ⅳpart 1)
  ☆うるちゃんの実家の地域のA教団のMA教会(Ⅳpart 1)
  ☆ へいわくんの実家近くのA教団の宣教師宅のMI教会(Ⅳpart 1)

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